苫小牧市出身の稲塚秀孝監督(74)の最新ドキュメンタリー映画「母と子の絆 カネミ油症の真実」が14~27日、本町のシネマトーラスで公開される。西日本を中心に発生した食品公害「カネミ油症事件」を取り上げ、2006~24年に撮りためた約120時間分の映像を86分にまとめた。稲塚監督は「自分たちが食べるものにこんな問題が起きる可能性があることを認識してほしい」と訴える。
同事件は1968年、カネミ倉庫(北九州市)が製造した米ぬか油に人体に有害な高濃度のPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入したことで発生。摂取した人の全身に吹き出物ができたり、手足のしびれが起きたりする被害が続出。障害や体調不良がへその緒を通じて子どもにも起きる事例も相次いだ。厚生労働省が認定する患者は2024年3月末時点で2377人だが、それよりはるかに多くの被害者を指摘する研究者がおり、2世、3世への影響も問題視されている。
稲塚監督は被害者や研究者に加え、カネミ倉庫の関係者も含めて55人に取材し、現場の声を拾い集めた。生々しい実態を伝える証言や、体調に問題があっても認定基準に届かず補償がなされない姿も描いた。
「被害者のなかには移住した人もいて、北海道にも潜在的な被害者はいるはず。ただ国も調べていないので総数が分からないのが現実だ」と稲塚監督。「多くの人は(補償についての)裁判が済み、カネミの問題は終わったと思っている。でも被害はまだ何も収束しておらず、それを少しでも知ってほしい」と来場を呼び掛ける。
14、15両日は、午前9時20分からの上映終了後に、稲塚監督が舞台あいさつをする。
















