苫小牧市音羽町の会社員小谷理訓(まさのり)さん(42)は、約20年にわたって双極性障害という病と向き合ってきた経験を生かし、精神疾患を抱える人の心の居場所づくりを始めた。生きづらさを感じている人からの相談をメールやSNSで受け入れ、自身の経験から得た情報を提供したり、外出を手助けしたりするピアサポート(仲間同士の支え合い)活動を構想している。「同じ境遇だからこそ分かり合える苦しみもある。一人で悩まないで」と呼び掛ける。
小谷さんは滝川市出身。心の不調を自覚したのは、室蘭工業大学に通っていた19歳の頃。大好きだった数学の勉強がつまらなくなり、講義を欠席するように。アルバイトや恋愛もうまくいかなくなった。「いつも人の輪の中にいて、元気で明るい性格」を自負していたが、自宅に引きこもり、毎日のように「死にたい」という考えだけが頭を占めるようになった。
抑うつ状態は数カ月続いたが、次第に気分が異様に高まる「そう状態」に移行。周りが驚くような行動力を発揮して病を克服したかのようにも見えたが、気分の高揚と落ち込みを繰り返す双極性障害(そううつ病)の診断を受けた。
道外で就職して結婚してからも、何度も病に苦しめられた。死の衝動に駆られたり、自宅にこもりきりになったりしたが、ある日「このままでは妻に迷惑を掛ける」と思い直し、乱れていた生活習慣を整えることを決意。早朝散歩を始めて地域のごみ拾いにも取り組むうち、病との付き合い方が少しずつ分かりかけてきたという。
その後、道内企業に転職し、2024年4月に苫小牧に移住。病を抱えながら仕事に励む中で「自身の経験が同じように苦しんでいる人の力になれば」と病名を積極的に公表し、SNSやメールの相談に応じることを決断。相手のつらさに寄り添い、少しでも心が軽くなるような情報を提供するほか、散歩やごみ拾いを一緒に行うなど外出機会を増やす手伝いもしたい考えだ。
小谷さんは「心の病気はつらいし偏見もあるけど、恥ずかしいと感じて隠すことはしたくない。病の人を孤立させ、追い詰めないような社会をつくるため、自分に今できることをしたい」と話す。
小谷さんへの連絡は電子メールsankyu615kotani@yahoo.co.jp。フェイスブックやインスタグラムからも可能。
















