北海道ガス(札幌市、以下北ガス)は7日、苫小牧東港区にカーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)拠点を整備する検討を始めたと発表した。新たな天然ガス(LNG)基地を建設する構想で、水素や合成メタン(e―メタン)など次世代技術の導入も目指す。2025年度に建設の可否などを判断するが、早ければ30年代前半にも稼働を始める見通しだ。
苫小牧港管理組合が市弁天で所有する約11ヘクタールを有償で借り、LNGを輸入するための外航船受け入れ設備や、LNGのタンクや気化器、ローリー出荷設備などのLNG基地を新設する構想。同社はこれまで石狩湾新港からLNGを輸入し、道内各地に出荷しているが、今後も企業向けを中心に増加が見込まれるため、苫小牧と石狩の2拠点とする考え。タンクは石狩LNG基地にある容量18万キロリットルと同程度を想定しており、総事業費は数百億円規模になるとみられる。
さらに水素やe―メタン活用設備の導入も目指す。北ガスは23年から西部ガス(福岡県)などと、水素と二酸化炭素(CO2)から都市ガス主成分のメタンを合成する技術「メタネーション」の実証事業を進めている。e―メタンは工場排出のCO2を使うことで、メタン燃焼時にCO2が発生しても実質ゼロにできる仕組みで、苫小牧でも技術やノウハウを生かせないか検討する。
苫小牧やその周辺は、道内唯一の製油所である出光興産北海道製油所や、道内最大の石炭火力である北電苫東厚真発電所などが立地し、CO2を分離、回収、貯留するCCSや、水素サプライチェーン(供給網)構築など、脱炭素化の先進的な取り組みが盛んな背景もあり、北ガスも次世代技術に挑戦する適地と選んだ。
北ガスは「北海道におけるGX(グリーントランスフォーメーション)の推進を一層加速させるため、エネルギーインフラが集約される苫小牧地区で、将来的な水素・e―メタン導入などを見据えて検討する」とコメントを出し、「将来のCN時代の道筋を描くことで、エネルギーの安定供給とGXの推進に貢献する」としている。
苫小牧港管理組合が目指すCNポート形成などにも弾みがつきそうで、港湾管理者の金澤俊市長も「エネルギーインフラが集約する苫小牧港のポテンシャルを生かし、次世代エネルギーの供給拠点として本道経済の発展に寄与すること、船舶へのLNGバンカリング(洋上給油)体制の構築によるLNG船の普及促進に期待する」とコメントを出した。
















