安平町追分地区が誇る特産品として知られる「アサヒメロン」。ブランド価値が高く、町内外から多くの支持を得ている。一般社団法人あびら観光協会が地元農家の協力を得て行うグリーンツーリズム事業にこのほど参加し、生産から消費者に届くに至るまでの舞台裏を取材した。(胆振東部支局・石川鉄也)
■メロン農家の一日
5日午前、追分柏が丘の道の駅「あびらD51(デゴイチ)ステーション」から車で15分ほどの追分旭の林出農場では、午後の出荷に向けて倉庫の中で検査、仕分け作業が行われていた。同農場は50年以上にわたるメロン農家として知られていて例年、地元の先陣を切ってメロンを出荷。この日は100ケース(平均1ケース5玉入り)を集出荷場に運んだ。
林出一樹さん(46)によると、収穫は5~10月だが、年明けには種をまき、苗の定植、着果も合わせると、メロン栽培は10カ月におよぶ時間を費やす。根気が必要な仕事だ。
収穫は全て手作業。シーズン中は毎朝午前4時から一日の仕事が始まる。「養分が集中している時に取るのが一番いい。早起きは大変だが、慣れました」と林出さん。生育は雨や風、温・湿度に左右されるため、本体に傷を付けず、かつ糖度が高くなるよう収穫のタイミングに気を配る。
周辺ではアライグマの出没が後を絶たず、年間30~40ケース分ほど被害を受けるという。そうした環境の中で見た目、中身とも状態の良い最高級メロンを提供しているのだ。
■追分旭地区が発祥
アサヒメロンの由来は1964(昭和39)年、旧追分町の旭地区で3人の農家による試作が行われたことからその名が付いた、とされる。70年に21戸の生産者がアサヒメロン組合を結成。昨年50周年の節目を迎えた。年間生産量6万ケース(480トン相当)、販売金額にして2億円以上を売り上げる。今年度は24戸計26ヘクタールの畑で「ルピアレッド」「ティアラ」「レッド113」の3品種を作付けし、10月末まで出荷する予定だ。
ただ今年度は新型コロナウイルスの影響の長期化に伴い、生産者は苦戦を強いられている。競りができず相場がつかないため、昨年の10分の1以下まで価格が落ち込んだ。6月中旬から例年並みに持ち直したが、副組合長でもある林出さんは「5月の販売高は前年の6割ほどだった。コロナの影響で1箱1000、2000円と言われる可能性もあった」と振り返る。生育は順調だっただけに生産者にとっては大きな痛手だ。
■生産者と消費者をつなげる
こうした中、あびら観光協会は地元農産物の魅力を知ってもらおうと、グリーンツーリズム事業「畑さんぽ」を企画。昨年から「あびらベジナビ」と銘打ち、メロンに限らず、地元農作物の収穫時期に合わせて普段は入ることができない畑を歩いて旬の作物を堪能しながら、生産者の思いを直接聞くユニークなイベントを展開する。
今季の皮切りとなったメロン畑編には、町内外から5人が参加。メロンの生育過程や日頃の工夫など一通り説明を受けた後、収穫から1週間ほどがたって食べ頃になったアサヒメロンを実食した。
周囲には甘い香りが漂い、頬張った瞬間、口の中でジュワーと果汁があふれてくるのが分かり、食べた人たちに笑顔が広がる。地道な努力を知って食べるメロンは格別だ。親子で参加した苫小牧明野小4年の秦野桃歌さん(9)は「苦労した分だけおいしいことが分かった。メロンのことや農家の方の苦労をみんなに伝えたい」と目を輝かせた。メロン畑編は好評のうちに終了した。
町内では今後、そば畑やトウキビ畑の散歩、枝豆狩りやジャガイモ掘りなど、さまざまなベジナビ体験が目白押し。ガイドを務める松井由美子さん(42)は取り組みを通じて、「生産者と消費者をつなぐパイプ役になれば」と話す。多くの人がこのプログラムに参加し、そこでしか味わえない感動を体験してほしい。
詳細は同協会ホームページなどで紹介している。




















