ウポポイ開業 あすで1カ月 道議・神戸さん喜びひとしお 共生社会実現へ尽力

ウポポイ開業 あすで1カ月 道議・神戸さん喜びひとしお 共生社会実現へ尽力
ウポポイで民族衣装をまとい、アイヌ文化復興と発信の拠点誕生を喜ぶ神戸さん

 白老町に誕生したアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)への思い入れを強くする道議会議員がいる。白老在住で当選9回のベテラン神戸典臣さん(81)=自民、胆振地域選挙区=だ。1983年の初当選以降、アイヌ民族の地位向上に心血を注ぎ、国の先住民族施策を後押しした。12日で開業1カ月を迎えるウポポイ。民族共生社会を目指すナショナルセンターの発展に期待を寄せる。

 神戸さんは岩手県花巻市出身で、早稲田大学政経学部卒。室蘭出身の衆院議員の故南条徳男氏の秘書を務めた後、政治家を志して1978年に白老へ移り住み、79年の道議選に挑戦。落選したものの、83年に再び挑み、議席を獲得した。政治家を目指す志を支え続けたのは、当時の後援会長で北海道ウタリ協会(現北海道アイヌ協会)理事長の故野村義一氏だった。

 当選して1年近くたったある日、野村氏が訪ねて来てこう話した。「明治政府が制定した旧土人保護法という、差別的な名の法律が今もまかり通っている。アイヌ(人間)という言葉でさえ使えないような社会はおかしい。旧土人保護法を無くし、民族の尊厳を回復する新しい法律を作るために君も努力してほしい」。生涯を懸けてアイヌ民族の社会的・経済的格差や差別の解消に尽くした野村氏の話に共感した。

 神戸さんは84年3月の道議会定例会で、民族の自立や格差解消を目指す新法制定の考え方について当時の横路孝弘知事を追及。旧土人保護法を廃止し、新法を作るよう国に求めていく知事の考えを引き出した。この質疑が一つの契機となって、97年の旧土人保護法廃止とアイヌ文化振興法の制定、そしてアイヌを先住民族として法的に定めた昨年5月施行のアイヌ施策推進法へとつながった。

 神戸さんは当選回数を重ねて道議会議長など要職を歴任。2012年に超党派で結成したアイヌ施策推進北海道議会議員連盟の会長も担い、野村さんの思いを背に総合的施策や共生社会の実現に向けて尽力した。

 国が先住民族施策の象徴として白老町に開設したウポポイは、7月12日のオープンから明日で1カ月。神戸さんは「以前と比べてアイヌ民族や文化に対する人々の見方、考え方はずいぶんと変わったと思う。民族問題について私に教えてくれたのは野村さんであり、恩人にウポポイを一目見てほしかった」と話した。

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